2022.12.21

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嚥下食とは?最新版の分類・形態の決め方・食事方法

嚥下食とは?最新版の分類・形態の決め方・食事方法

加齢とともに普通のご飯では食べにくさを感じるようになったら、嚥下(えんげ)食を考え始める時期かもしれません。

嚥下食にはいくつかの段階があり、飲み込む力に合わせて選ぶ必要があります。食べる量が減ってしまうと体力の低下や低栄養につながってしまうため、嚥下食について知っておくと安心です。

この記事では、嚥下食とは何か、嚥下食の分類や決め方、食事方法について解説します。

1.嚥下食(嚥下調整食)とは

嚥下(えんげ)食とは、噛む力や飲み込む力といった嚥下機能が低下した方が食べやすいよう、やわからさや形態を工夫した食事のことです。嚥下調整食とも呼ばれています。

歯が抜けて噛み切ることが難しいけど、飲み込みには問題がない方。口周りの筋肉量や唾液の分泌量が低下して、咀嚼・飲み込み能力ともに衰えている方など、人によって嚥下障害の度合いは異なります。

そのため嚥下食と一口に言ってもムース食、ミキサー食など様々な段階があり、食べる人の咀嚼能力に応じた食形態で用意する必要があります。

2.嚥下食の分類【嚥下調整食分類 2021】

嚥下食の分類は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が作成した基準が用いられることが一般的です。もともと日本にはアメリカのような統一基準がなく、国内の医療・介護施設で共通して使用できるよう作られました。

最新版の「学会分類2021」は咀嚼能力の段階に合わせて嚥下食を7つに分けています。

※参照:日本摂食嚥下リハビリテーション学会「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」

コード0、1、2は細分類されており、

はゼリー状、はとろみ状の頭文字です。

咀嚼力の低下に伴いコード4(嚥下調整食4)からコード3(嚥下調整食3)、

コード2-2(嚥下調整食2-2)へと飲み込みが簡単な嚥下食へ移っていきます。

3.嚥下食の形態の決め方

日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「学会分類 2021(食事)早見表」を活用すると、食事形態を選択しやすくなります。必要な咀嚼能力が書いてあるため、食べる方の噛む力、飲み込む力に合わせて選ぶといいでしょう。

コード

名称

必要な咀嚼能力

0

j

嚥下訓練食品0j

若干の送り込み能力がある

t

嚥下訓練食品0j

若干の送り込み能力がある

1

j

嚥下調整食1j

食べ物を飲み込みやすい塊(食塊)にする力は弱いが喉に送り込める

2

1

嚥下調整食2-1

噛めなくても食べ物を飲み込みやすい塊(食塊)にして喉に送り込める

2

嚥下調整食2-2

噛めなくても食べ物を飲み込みやすい塊(食塊)にして喉に送り込める

3

嚥下調整食3

舌と上あごで食べ物をすりつぶして喉に送り込める

4

嚥下調整食4

咀嚼機能が少し低下

参照:日本摂食嚥下リハビリテーション学会「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」

数字が小さくなるにつれて飲み込みやすく、食事でむせてしまう方でも安心して食べられます。ただし、必要以上にレベルを下げると歯ごたえが少なく満足感が得られない、見た目がさみしく食欲低下につながる場合があるため、食べる力を見極めて嚥下食の形態を決めることが大切です。

4.嚥下食は食事方法も重要【食事の手順】

嚥下食は飲み込みやすい食事形態ですが、食べるときの姿勢や食べ方次第で誤嚥につながる可能性があります。嚥下食を取り入れる際は、誤嚥しにくい食べ方や生活習慣を身に着けることが大切です。

①手や口まわりを清潔にする

食事前に手や口まわりが清潔か、口内や喉に異物がないか確認します。口内が汚れていると、誤って飲み込んだときに細菌を含んだ唾液が気道に入り、誤嚥性肺炎のリスクが高まってしまいます。手を洗うのが大変な方は、おしぼりなどを活用しましょう。

②食事するテーブルをキレイに整える

テーブルの上が散らかっていると、食事に集中できません。落ち着いて食事をするために、片付けてキレイに整えておきましょう。

③深呼吸や首回りの体操をして体をほぐす

誤嚥予防に準備運動もおすすめです。顔や首まわりの筋肉の緊張を解いたり、鍛えたりします。まず、深呼吸してから首を左右1回ずつ回し、肩の力を抜きます。頬をふくらませたり引っ込ませたり、大きく口を開いて舌を出し入れしたり左右に動かしたりと、口や頬、舌を全体的に動かしましょう。パ行や「タ・カ・ラ」をゆっくり発音することも効果的です。

④喉がまっすぐに安定する姿勢で食べる

むせたり、こぼしたり、飲み込みにくさが気になる場合は、食べる姿勢を調整しましょう。首が後ろに反り返った姿勢で食べると誤嚥しやすくなるので、枕などを首の後ろにあてて頚部を前屈させます。30~60度の角度に調整すると食べやすくなる場合があります。

⑤食べやすいものから口に入れ、ゆっくりよく噛む

一口ずつ飲み込んだのを確認してから、次の食事に進みます。口の中に食べ物が残っている状態で食べ進めると、口の中が食べ物でいっぱいになりむせやすくなります。

⑥1回の食事は30〜45分以内に切り上げる

時間をかけて食事をすると疲れてしまい、集中力も続かなくなってしまいます。食べるペースは人それぞれなので、介護する場合は急かすことがないよう注意しましょう。

⑦食後に歯磨きとうがいをする

食べ物が口の中に残っていると、食後に誤嚥や窒息につながる可能性があります。口腔ケアは食事とセットで行いましょう。

また、食事時間を決めて1日のリズムを整えることも大切です。食が細い方は、食間に水分摂取とおやつによる栄養補給を心がけましょう。

5.まとめ

嚥下食は、噛む力や飲み込む力が弱くなった高齢者に適した食事形態です。「嚥下調整食分類 2021」を活用すれば、高齢者の嚥下機能がどの段階にあるのか簡単に確認できます。

とろみ水、ムース食、ミキサー食、やわらか食、軟菜食など様々な段階があるので、咀嚼能力に応じた嚥下食を用意しましょう。

食べるときに、「口腔チェック」「食べる姿勢」「環境整備」「準備体操」「ゆっくりよく噛んで食べる」「ある程度の時間で食事を切り上げる」などを心がけることで、誤嚥のリスクを減らせます。嚥下機能に不安がある方は、嚥下食をぜひ活用してみてください。

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