2022.04.25

介護食

高齢者が食事でむせる原因とは?嚥下障害や誤嚥性肺炎に注意しよう

高齢者が食事でむせる原因とは?嚥下障害や誤嚥性肺炎に注意しよう

高齢者の方が食事中にむせてしまう原因とは何でしょうか?ひんぱんにむせる場合、体調不良や病気ではないかと、心配に思われるかたもいることでしょう。むせること自体は身体反応のひとつですが、あまりに続くようであれば注意しなければならない点もあります。

そこでこの記事では、高齢者が食事中にむせる原因と、むせの原因となる嚥下障害について、嚥下障害の症状や対応方法などをご紹介します。

1.高齢者が食事時にむせる原因

高齢者が食事中にむせてしまう原因のひとつに、飲み込むときに必要な筋力の衰えがあげられます。

通常、嚥下する際は喉頭挙上筋群(こうとうきょじょうきんぐん)という筋肉が喉仏を引き上げて、喉頭蓋(こうとうがい)という弁が気管をふさぎ、食べ物が食道に入ります。しかし、加齢によって喉頭挙上筋群が衰えると、喉頭蓋が気管をふさぐタイミングがずれて、食べ物が気管に入りやすくなります。

気管に異物が入ると、それを排除しようとして咳やむせなどの防御反応が起こるのです。

2.高齢者がむせる場合に注意したい嚥下障害

高齢者が食事時にひんぱんにむせるのであれば、嚥下障害に該当するかもしれません。嚥下障害とは、うまく食べられない・飲み込めない状態のことで、飲み込んだ食べ物や飲み物が気管へ入り込んでしまう可能性が高まります。

また、口の中の雑菌が食べ物や唾液などと混ざり、気管から肺へと入り込むと誤嚥性肺炎を引き起こす場合もあります。誤嚥性肺炎になると、発熱や激しい咳、呼吸困難などの症状が現れ、体力の弱った高齢者では生命に直結する危機につながることもあるのです。

3.嚥下障害の場合に見られる症状

嚥下障害に見られる症状にについて解説します。

食事中にむせたり咳き込んだりする

食事中、ひんぱんにむせたり咳き込んだりするときは、嚥下障害の可能性を疑いましょう。とくに、味噌汁やお茶などの水分摂取時や水分を多く含んだ食べ物を食べた場合にむせやすくなります。むせるのを嫌がって水分を控えると、脱水にもつながりかねません。

硬い食べ物を噛んだり飲み込みにくくなったりする

硬い食べ物を食べられなくなるのも、嚥下障害の症状のひとつです。硬い食べ物はしっかり噛まないと嚥下しにくいため避けるようになります。反対に柔らかい煮物や麵類など噛まなくても飲み込みやすいものばかりを好むようになり、栄養の偏りによる低栄養が懸念されます。

食事に疲れる・食欲が低下する

食事に疲れたり、食欲が低下したりするのも嚥下障害に見られる症状です。しっかり咀嚼しなければ飲み込めない、口腔内に食べ物が残りやすいといった理由により、食事に時間がかかります。そのため、食事を苦痛に感じて食欲が低下してしまい、十分な栄養がとれないケースもあります。

食後に声がかすれる

嚥下障害で見られる症状に、食べ物を飲み込んだあとに声がかすれやすいというものもあります。痰が絡みやすくなるため、食後はがらがら声やかすれ声になることもあるようです。

体重が減少する

嚥下障害に伴い、体重が減ることもしばしばあります。嚥下障害によって食事量が減ったり、食べる物が偏ったりするため、必要なエネルギーや栄養素が足りず、体重が減っていくのです。

4.嚥下障害への対応方法

嚥下障害は高齢者のQOL(生活の質)を著しく下げてしまう原因にもなります。そこで、嚥下障害を予防するための方法をご紹介します。

飲み込みやすい食事を提供する

固形の食べ物を飲み込むのが難しい場合は、嚥下しやすいようにゼリー状やペースト状に調理しましょう。家庭で用意するのが難しいときは、介護施設や介護食の宅配サービスなどを利用する手もあります。

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食事に集中できる環境を整える

食事に集中できる環境づくりも必要です。食事以外に気が向くと飲み込むことに集中できなくなるため、食事中はテレビを消して、落ち着いて食べられる環境をつくりましょう。

食事中はあごを引く姿勢を維持する

食事中は姿勢に気をつけることも大切です。必ずかかとのつく椅子に座り、やや前かがみであごを引き気味にすると誤嚥を起こしにくくなります。ベッドで食事をとる場合は40~60度の角度に背もたれを調整し、あごを引いた姿勢をとらせます。食事介助が必要な場合は、30度の傾斜にすると食べさせやすくなるはずです。

一口は少なめでゆっくり食べさせる

食事介助が必要な場合は、食べさせ方にも注意しましょう。飲み込みやすいよう、口の中に入れる量は少なめにするのが基本です。また、焦らせないようにゆっくり食べさせることも重要です。一口ごとに口の中が空になっているか確認してから、次の食事を口に運ぶのもポイントです。

食前・食後の口腔ケアを欠かさない

口腔ケアを行うことも、誤嚥性肺炎を予防するのに大切です。口腔内の細菌が肺に入ると誤嚥性肺炎につながるので、食前食後にしっかり歯を磨き、入れ歯も洗浄して、口の中を常に清潔に保つようにしましょう。

5.まとめ

高齢者が食事でむせる原因は、筋力低下により食べ物が気管に入ることで起こる防衛反応です。しかし、食事中にむせたり咳き込んだりするほか、硬い食べ物を避ける、食事で疲れている、食後に声がかすれるといった様子があれば、嚥下障害の可能性もあります。

なるべく食べやすいようにゼリー状やペースト状の食事を用意する、食事中に気を散らさないように静かな環境を整える、誤嚥を起こしにくいようにあごを引いた姿勢で少しずつ食べさせる、食前食後の口腔ケアを欠かさないといったポイントを押さえて嚥下障害を防ぎ、食事でむせにくくしてあげましょう。

 

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