「全粒穀物」が糖尿病リスク低下 玄米食べやすくする提案も

日本でも玄米に血糖値を下げる効果があることが明らかになっている。玄米を食べやすくする提案もされている。
全粒穀物は食物繊維が豊富
全粒穀物(ホールグレイン)とは、精白などの処理で、糠となる果皮、種皮、胚、胚乳表層部といった部位を除去していない穀物のこと。
食事で全粒穀物を多く摂ると、精白した穀物の多い食事よりも、2型糖尿病や心臓血管疾患のリスクを低く抑えられることが、多くの研究で示されている。
全粒穀物が体に良いことが知られるようになり、全粒穀物を使ったパンやパスタ、オートミール、玄米、全粒コーンミールなどは店頭で買いやすくなってきた。
精白の過程で失われる部分にミネラル、ビタミンB群、マグネシウム、鉄分などが豊富に含まれている。
主食を精白度の低い胚芽米や麦飯、全粒粉のパンなどにすると、食物繊維も多く摂取できる。
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全粒穀物は血糖が上昇しにくい
ブドウ糖を摂取した後の血糖上昇率を100としたときの、食品ごとの血糖上昇率を表す指標を「グリセミック指数(GI)」という。
全粒穀物はGI値が低く、食後の血糖変動が小さく、インスリンの過剰分泌を抑え、血管にダメージを与えにくい。
全粒穀物が、血糖を下げるインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗を改善し、中性脂肪(トリグリセリド)の上昇も抑え、メタボリックシンドロームが改善するという研究も報告されている。
また、全粒穀物に含まれるフィトケミカルには抗酸化作用があり、細胞の老化を防いだり、血管の若さを保ち、動脈硬化の予防に役立つ。
さらには、全粒穀物に含まれる食物繊維により、満腹感を長時間持続しやすくなり、摂取カロリーを抑えられる。全粒穀物は体重コントロールにも有利だ。
全粒穀物を食べると糖尿病リスクが低下
全粒穀物を食べている人では2型糖尿病の発症が少ないという研究を、スウェーデンのチャルマース工科大学やデンマークがん学会研究センターなどが発表した。
この研究は、全粒穀物、フスマ、胚芽といった食品の摂取と、2型糖尿病の発症の関連を調べたもの。
穀物は、小麦、米、ライ麦、オーツ麦、トウモロコシ、オオムギ、キビ、モロコシといった種類がある。
研究チームは、デンマークの食事・がん・健康コホートに参加した50~65歳の男女5万5,465人のデータを解析。
毎日のパンを全粒穀物に代えることを推奨
その結果、全粒穀物を毎日50g(1日に3皿分)以上摂っていたグループでは、ほとんど摂らないグループに比べて、2型糖尿病の発症リスクは、男性で34%、女性で22%それぞれ低下した。
全粒穀物を使っていれば、ライ麦ブレッド、パスタ、オートミール、シリアルなど、どんな食品であっても、2型糖尿病のリスクを低下させる効果を期待できるという。
「今回の研究は、全粒穀物を推奨する食事ガイドラインを裏付ける結果になりました。精白された穀物を、精白されていない全粒穀物に代えることをお勧めします」と、チャーマーズ工科大学のリカード ランドベリ教授は言う。
全粒穀物を食べると心血管疾患リスクが低下
米国ハーバード大学公衆衛生大学院が約12万人を対象とした研究によると、全粒穀物を1日28g以上食べる人は、ほとんど食べない人に比べ、死亡率が5%低下する。
とくに心筋梗塞や心臓発作などの心血管疾患で死ぬリスクは9%も低下するという。
約16万人を18年間追跡した調査では、全粒穀物が多い人では2型糖尿病の発症リスクが最大で35%低下することが判明した。
玄米が2型糖尿病リスクを低下
玄米にも糖尿病を予防する効果がある。1日の摂取量の3分の1に相当する50gの白米を、同じ量の玄米にかえると、2型糖尿病のリスクは16%低下する。
「全粒穀物を食べることで糖尿病や心血管疾患を予防でき、寿命を延ばせることが示されました。精製されていない穀類を食べ続ければ、長期間で大きな差が出てきます」と、ハーバード大学公衆衛生大学院のキ サン准教授は言う。
米国の食事ガイドラインでは、成人は全粒穀物を1日あたり少なくとも3~5サービングを食べることを推奨している。
全粒穀物のパン1切れがおよそ1サービングに相当し、食物繊維は2g以上含まれる。
玄米に血糖値を下げる効果

玄米は、稲の果実である籾から籾殻のみを取り除いたもの。玄米の外皮は栄養価が高いため、精白米に比べ食物繊維が約6倍、ビタミンB1が約5倍、マグネシウムが約5倍多く含まれる。
琉球大学の研究チームは、玄米に含まれる成分「γ(ガンマ)-オリザノール」に、インスリンの分泌を促進し、血糖値を下げる効果があることを明らかにしている。
この栄養成分が脳の中枢に作用し、食欲を抑えることも解明。玄米を食べると、自然に食事の好みが変化し、食べ過ぎを抑えられるという。
このように健康に良い効果のある玄米だが、一般的には好んで食べられていない傾向がある。
玄米が好まれない原因はいくつかある。そのひとつは硬さ(食感)。えぐみや匂いが気になるという人も少なくない。
「もち米玄米」は玄米の欠点を解消
そうした玄米の欠点を解消する方法がある。それは、「もち米玄米」を使うというものだ。
「もち米玄米」が血糖コントロールを改善するという研究が発表された。米を主食とする日本人にとって嬉しい情報だ。
聖マリアンナ医科大学代謝・内分泌内科は、2型糖尿病患者37人を対象に、「もち米玄米」を8週間摂取してもらう研究を行った。
その結果、24時間平均血糖値および食後血糖値が改善することが明らかになった。
研究チームは、参加者を精白米を摂取するグループと、「もち米玄米」を摂取するグループに無作為に分けた。
24時間の平均血糖値は、「白米」を摂取したグループでは144.2mg/dLだったのに対し、「もち米玄米」を摂取したグループでは126mg/dLに低下した。食後血糖値も改善した。
嗜好性に関するアンケートを行った結果、おいしさを示すスコアは、白米、玄米と比べ「もち米玄米」が最高値を示した。
「玄米食のパサパサとした食感を好まない人も多いが、もち米玄米のしっとりと柔らかな食感は日本人の好みに合っている」と、研究者は述べている。
- Whole grains one of the most important food groups for preventing type 2 diabetes(Chalmers University Of Technology 2018年9月5日)
- Higher Whole-Grain Intake Is Associated with Lower Risk of Type 2 Diabetes among Middle-Aged Men and Women: The Danish Diet, Cancer, and Health Cohort(Journal of Nutrition 2018年9月)
- More whole grains linked with lower mortality(Harvard School of Public Health 2015年1月5日)
- Replacing white rice with brown rice or other whole grains may reduce diabetes risk(Harvard School of Public Health 2010年6月14日)
- White Rice, Brown Rice, and Risk of Type 2 Diabetes in US Men and Women(Archives of Internal Medicine 2010年6月14日)
- Eating Glutinous Brown Rice for One Day Improves Glycemic Control in Japanese Patients with Type 2 Diabetes Assessed by Continuous Glucose Monitoring(Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition 2017年5月)
(2018年11月)
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